時の流れ
僕には彼女がいる。
かれこれ5年は付き合っているだろう。
正確にはもう5年は超えているのだけど、よく分からないので「5年以上付き合っても〜」と濁しているが、この作戦は成功している。10年目がいつなのかが分からないのが本当に恐ろしい。
それで馴れ初めであるが、当時長髪でいけいけ、ホームステイ先のカナダで買ったボロボロのTシャツに見を包み、「この良さはおしゃれな人にしか分からんよ」なんて言っていたこの僕に彼女は手紙を渡してきたのであった。
もはや公園に住んでいるちょっと若めのやつに「ここに行けばご飯がありますよ」と書いてあっても不思議ではないくらいの出来事であったが彼女は行動に出たのであった。
ちなみに僕のファッションはあまりにも未来を、いや、過去かな、に行きすぎていて、みんな訳がわからないまま「あいつはお洒落だ」と言ってくれていたのが救いであった。
今となれば分かる。
彼らは少し頭がおかしかったのだろう。
まあなにしろそんな僕に彼女は手紙を渡してくれた。
そんなこんながあり、いつの間にか僕らはくちゅくちゅ、とぴゅっとする仲になり、合鍵を持ち、こたつでみかんを食べるような生活にまでなった。
腹を出しいびきをかいて寝ている。
僕ではない。あの可憐な彼女がだ。
僕らはまだ20代だぞ?!
仮にも男がそんな状態になるのはわかる。
というかそんな状態になっている僕に毛布の1枚でもかけてほしい。
10年目が来たら亭主関白さながらに「10年前はこんなことなかったのになぁ」とさらりと言う心づもりはもう出来ている。
最近彼女は鬼になる。
今はまだその時ではない。
まだ慌てるような時間ではない。
問題は10年目がいつなのか分からないことなのだ。
まだだ、まだ慌てるような時間じゃない。